ボロアパート再生Old apartment reborn

01.築40年のボロアパートをどうする?

02.古家は、売却か?建て替えか?リフォームか?

03.民間の資産を国が補助!長期優良住宅化リフォーム推進事業

04.オーナーの費用負担を抑えて、最低の性能から最高の性能へ

05.最新の省エネ技術「地中熱利用」

06.事業を成功に導く設計事務所の役割

07.家賃は周辺相場よりも高くできる

01.築40年のボロアパートをどうする?

北海道の北見市に経つアパート。2戸で一棟が3棟、計6戸になります。3棟の内2棟は1972年(昭和47年)築、残りの一棟は1976年(昭和51年)築なので、築40年(2015年時点)ということになります。北見市は人口約12万人のオホーツク地域最大の都市です。日本の地方が抱える少子高齢化に伴う人口減少と高い高齢者率という課題を持つ地方都市です。

人口減少は、貸し家を持つオーナーにとっては、マイナス要因となります。この物件も6戸の内、入居者は1戸のみ、しかも3万5千円の家賃を2年前から滞納。もはや、賃貸事業とは名ばかりで負の遺産でしかない状態でした。古家でも都市計画税、固定資産税を取られていることを考えれば、持っていても損するばかりの疫病神のような物件でした。

02.古家は、売却か?建て替えか?リフォームか?

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オーナーは、サラリーマンを20年以上前に定年退職し、今は、札幌で長期療養をしています。そのため、オーナーの奥様は入院費用の確保のため売却を考えていましたが、地方都市の不動産価格は安く、土地の価格は7~8万円/坪程度。しかも、これでも40年前に比べ値上がりしていることから売却すると税金が取られてしまいます。更地にして売却ということになると、古家の解体費用もかかるので手元に残るお金は意外と少ないことがわかりました。

そこで、リフォームして利益を生む物件として家賃収入を得る方向で検討することにしました。オーナーの療養費の足しに5万円/月の収入が得られることを目指して事業計画を作り始めました。また、オーナーが亡くなられた後、奥様の年金の足しにもなることからも事業を進めることとなりました。

A案:建て替え 12戸、10戸、8戸

B案:リフォーム 6戸+新築2戸

C案:リフォーム 6戸

地方都市においては、高齢者が増えているが、高齢者が安心して暮らせるバリアフリー住宅が無いことから、高齢者住宅として建て替える案を重点的に検討しました。

03.民間の資産を国が補助!長期優良住宅化リフォーム推進事業

検討を進めている途中で、国交省が「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が、1戸あたり100万円だったのが、条件を満たせば200万円を出すことになりました。調べると、今回の物件でも使えることがわかり、計画は、C案の既存の6戸をリフォームすることになりました。

1戸あたり100万円だったのが、1戸あたり200万円に増額されましたが、リフォームのグレードはとても高いものが要求されることになります。「劣化対策」「耐震」「維持管理のしやすさ」「省エネ」「高齢者対策」「可変性」「住戸面積」等のグレードが、新築の長期優良化住宅と同等のレベルが求められます。

その分工事費はUPしますが、性能が高い住宅は資産価値が高くなると考えられますので、今回は200万円/戸のリフォーム推進事業を進めることにしました。

いままでの賃貸住宅は、事業性を高めるために極力安く建てて、利回りを高くするというのが常識になっていました。しかし、完成して間もないころは満室になっていたとしても、周囲でも次々と新しい賃貸住宅が建つと入居者はどうしても新しい建物に入ってしまいます。5年経ち、10年経ち、古くなってくると入居者に対しての魅力はどんどん下がり、同時に家賃も下がってしまいます。

今回は、質の高い賃貸住宅とすることで、見た目だけではない性能の高い賃貸住宅にし、魅力を保ち続けることを目指すことになります。

40年前の建物とは、どういうものなのでしょうか?

基礎のひび割れ

数ある建築基準法の改正の中でも1981年(昭和56年)の改正は、構造基準の大きな改正がありました。それまでの木造住宅では、基礎に鉄筋を入れなくてよかったので、この築40年の建物の基礎にも鉄筋は入っていませんでした。現地で調査すると、ところどころ、基礎に元気な(笑)ヒビが入っていました。コンクリートのひび割れも一概にすべてが危険というわけではないのですが、今回のひび割れは、明らかに危険なレベルでしたので、根本的な補修が必要になることがわかりました。

04.オーナーの費用負担を抑えて、最低の性能から最高の性能へ

新築の優良長期優良住宅はの割合は、2009年に制度がスタートし、普及の割合は、新築一戸建て(分譲、持家、貸家、供給住宅を含む)の23~24%。注文住宅に限れば70.7%(2013年度)で、2014年6月末時点で50万戸を超えた状態となっています。

劣化対策等級でいえば等級3(最高等級)相当なので、数世代持つ家ということになります。国交省では「構造躯体の仕様継続期間が少なくとも100年程度」と言っています。
これは、現在考えられる最高水準の住宅性能と言えるのではないでしょうか?

賃貸住宅では、事業性を上げるために、断熱材を薄くしたり、メンテナンスのことを考えずに工事費を安くするために配管工事をしたり、外装材も考えるられる最低価格の材料を選らぶのに比べると、通常の賃貸住宅とは雲泥の差と言っても良い性能です。

言いかたを変えれば、高度経済成長の頃に建った質の低い建物を最高の性能にするための費用を国が出してくれる。と言ってもいいかもしれません。

青がリフォーム前、赤がリフォーム後、黒は標準的な住宅の性能

レーダーチャートで性能を確認してみましょう。青い部分が当初の性能、赤い部分がリフォーム後の性能です。その間にある黒い部分が標準的な住宅ですから、その激変ぶりがわかるのではないでしょうか?

05.最新の省エネ技術「地中熱利用」

今回のリフォームでは、更にグレードUPしている部分があります。それは、冷暖房に地中熱を利用したことです。地中熱は、他の自然エネルギーに比べ、日本中どこでも安定的に利用できる唯一の自然エネルギーです。

近年は、暖房の省エネルギー技術としてはヒートポンプというものを使うことが一般的となっていますが、極寒の北見市は冬の気温が低すぎるために暖房時にヒートポンプの効率が下がってしまい効率が下がります。一般的なエアコンは使えなく三菱電機の「ズバ暖」という機種くらいしか選択肢がありません。因みにパナソニックが「日本一の極寒地である陸別でテストをしています」といって寒冷地向けに販売しているエアコンが有りますが、パナソニックに聞いてみたら「北見では温まると保証ができません!」といっていました(苦笑)

話を戻します。地中熱によるヒートポンプは外気ではなく地中と熱交換を行うので、暖房時の効率低下を補ってくれる優れた省エネ技術なのです。ただ、問題は、コストが高いということ、通常地中熱を採熱する孔を一本掘るだけで100万円~300万円かかると言われています。それを、注文住宅ではなく民間の賃貸住宅に付けるなんて聞いたことは有りません。たぶん北海道は、ここが初めての試みでだろうと思いもます(喜茂別の村営住宅で事例があり)。

c-tou_tityuunetu 正面が地中熱、右側が通常のヒートポンプ(三菱電機ズバ暖)

全ての住戸に付けたわけではありませんが、どうして賃貸住宅にこのような高性能な設備をつけることができたのでしょうか?これも国の補助金制度を使って設置が可能になりました。こまめに探すと、国のいろいろな補助制度があります。

06.事業を成功に導く設計事務所の役割

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ポイントカラーを配した明るい外観

今回の工事会社は、地元の工務店でした。敷地からも車で5分程度なので、後々のメンテナンスのことも考えると最良の工務店だったと思います。しかし、その工務店が施工すると最初から決めていたわけではなく、数社の中から選定した結果そうなったのです。工務店の選定に関しては、「相見積方式」としました。

まずは工務店10社を選び出し、その中の5社と面談をし、それぞれの工務店に同じ図面を渡して、同じ条件で見積りを出してもらいました。

その結果、2社は辞退し、3社が見積りを出してくれました。
「相見積になりますが、見積りをして頂けますか?」と聞くと2社は、「相見積であれば対応できない」と言って断ってきました。価格競争には加わりたくない。更に、設計事務所にいろいろと面倒くさいことを言われたくない。ということなのかもしれません。その気持ちはわかりますが、建築の値段には定価というものがありませんので、適正な価格を知るためにはこういった方法が確実です。

結果は、以下の通りです。

A社、60,800千円(消費税別)

B社、46,000千円(消費税別)

C社、40,000千円(消費税別)

3社の平均は48,933千円なので、C社は平均の約80%となります。まあまあの結果だと思いますが、弊社の今までの事例ではもう少し差が開きます。今までの平均だと、だいたい70%位になっています。しかしまあ、これだけ金額が開いているということはちゃんと競争の原理が働いたのだの思います。

たまーに、設計事務所に頼むと設計料が余計にかかるという声を聞きます。設計料は工事費の約8%~12%位です。設計事務所が図面を書くことで

相見積もりができるということがすごっく大事

なんだと思います。このことだけで設計料を払う元が取れているといっても良いのかもしれません。しかも、建築士というプロが発注者の立場に立って工事現場を監理するのですから施工者側にも緊張感が生まれるし、思わぬミスも減らすことができます。実は施工者にとっても、別の立場で現場を見るプロの存在は、決してマイナスにはならないと思います。

07.家賃は周辺相場よりも高くできる

家賃は周辺相場よりも高くできる

 

かなや設計 環境建築家 金谷直政