設計料無料ということ

環境建築家の金谷です。

東京の下町、墨田区京島で設計事務所をやっています。所員が数名と、ネコがいるこじんまりとした設計事務所です。

最近、アパートの施工不良が巷をにぎわせています。一つはレオパレス21の界壁が無い共同住宅。もう一つは大和ハウスの共同住宅の外部廊下の柱部分の認定不適合です。

レオパレスについては、壁が薄くて音がまる聞こえという話は以前から良く聞いていたので、「やっぱりね~、そだねー」って感じです。隣の住戸との間の界壁が不十分だと、やはり音は良く聞こえてしまいます。レオパレスあるあるですが、宅配便が玄関のチャイムを鳴らすと、同じ階の住民が一斉に、玄関のドアを開ける。という笑い話も聞きますが、本当だとしたら笑い事ではありませんね。

一方、大和ハウスについては、歴史もありますし、あくまでもイメージですが、コンプライアンスもしっかりしていそうで、まさか、そんなことが起こるとは思いませんでした。

また、施工不良ではありませんが、積水ハウスの浜松支店でも、2009年に、確認申請書の副本を偽造したという事件がありました。

なぜ、こんなことがおこるのでしょうか?表題にも書きましたが、このいずれの事例も発注者に対して「設計料が無料」もしくは、非常に安く示されています。それが、どういう事かというと、発注者の立場に立って、建物の出来を確認する専門家が居ないということです。

いづれの場合も、会社という組織が主体となり、技術者を雇い、会社の方針の元、技術者に対して指示しコントロールしています。そういった雇用関係では、本来、施工の間違いを正すべき設計者が、自分の役割をまっとうすることができるのでしょうか?

言いたくは有りませんが、会社の利益に背いて不正を正す設計者は、社内では「技術者は融通が利かない!」「仕事を取ってきているのは営業なのに、エラそうなことを言うな!」と言われることは想像に難くありません。

ですから、法律では、建物を作る際には、施工者と設計者を明確に分け、建築士という資格を設けているのです。設計料無料の住宅メーカーや不動産業社などの会社は、社内での設計技術者の発言力が弱いということに他なりません。

建物の安全を確認するべき設計者が、専門外の上司や営業職に遠慮しながら設計・監理をしているような建物は、例えるなら、薬局が内科医を雇って大量の処方箋を出して利益を上げるようなものです。

イメージして下さい。巨大な薬局が経営している病院!そこでは内科医を雇っています。内科医は一生安泰な職場と高額な報酬が得られ、さらに定時にきっちり変えることが出来るので、気に入って勤めています。病院の医院長は医者ではなく薬局の社長です。

「診察料は無料」のこんな病院、あなたは信用できますか?いっぱい処方箋を出してくれます。それは、薬局が儲かるから。そんな病院に行ってみたいですか?

もちろん、こんな病院はありません。今は、基本的に医薬分業で、病院と薬局は別の法人が経営する必要があります。利益を上げようとする経営者と真摯に医学という真理を行う医者は、独立した立場にあります。医療の世界では当然なことが、建築の世界では、曖昧になっています。

むしろ、利益を最優先する住宅メーカーや不動産会社の方が、CM等を通して、私たちにアピールしてきて、イメージUPに努めてきているのです。

設計料無料に払う代償は大きいと思います。

施工者とは別の立場で行う現場監理