京都アニメーションは、何故大惨事になったのか?(その2)法の趣旨解釈の誤りかな

多くの報道やサイトでは、「今回の建物の違法性はない」というコメントが多いですが、その根拠は非常にあやふやです。3つの例を挙げると

■消防法上の違法性がないというコメントが多いようですが、建築の火災について、防火区画や排煙に関することは建築基準法です。テレビで「元東京消防庁の○口隆夫」という方が「法律違反はありません」と言っていましたが、これは消防法上のことに限ってだと思います。

■また、一般の方が、建物の避難ということで、建築基準法の「避難階段」の設置要件を調べて、避難階段の設置は5階縦以上の物件からと考えていますが、これは「避難階段」の設置要件であり、世の中の全ての階段が避難階段により避難するわけではありません。「避難階段」以外の階段でも安全に避難できるようにしなければならないのです。

■今回の、建築上の問題点は、「防火区画」の内「竪穴区画」(建築基準法施行令112条9)がしっかり確保されていなかったことです。

竪穴区画とは、ざっくり言うと、吹き抜けや階段などで上下階の空気がつながってしまうと、火災時の煙が全体に広がってしまうので、それを防ぐ区画が必要になるということです。

ですから、今回のような3層にまたがる階段の場合は、竪穴区画をつける必要があります。いくつかの緩和規定がありますが、今回はその緩和規定には当たりません。

今回は、この竪穴区画の条文の裏技的解釈により、竪穴区画が免除されていると推察します。

裏技的な解釈とは。この規模の建物だと建物の耐火性能は「準耐火建築物」以上にしなければなりません。しかし「準耐火建築物」の中に「ロ準耐-2」という構造があり、主要構造部を「準耐火構造」より脆弱にすることで竪穴区画を免除できることになる。という解釈が可能になるのです。

これは、知っている人は知っているという裏技的解釈で、一級建築士でも知らない方も多いと思います。

問題の条文は、「竪穴区画」を規定している建築基準法施工例112条9の冒頭で、「主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地下又は3階以上の階に居室を有する建築…」とあり、この階段部分を区画せよということなのですが、「主要構造部を準耐火構造」にしなければ区画しなくても良い。と読めてしまいます。ですから、準耐火構造よりも脆弱な耐火性能、例えば不燃程度、にすれば竪穴区画が免除されるという不思議な解釈が導かれてしまうのです。

でも、これは全くおかしな話で、「耐火性を脆弱にすることで避難経路の安全性を低くすることができる」緩和っておかしくありませんか?通常緩和とは、何か他の安全性が確認できるから、条文で必要なものを免除できるとういうのが常識なのではないのでしょうか?

建築基準法のほとんどは仕様規定です。仕様規定とは「こういう場合にこのような措置をしておけば良い。」という取り決めであり、「これだけの火災に危険性があるから、これだけの措置が必要」というような根拠に基づいたものではないのです。

ですから、今回のような裏技てきな法解釈がまかり通り、このような惨事につながったのだと思います。

ただ、法は法なので、裏技とはいえ違法ではないのです。今回のような物件の場合に限らず、趣旨から考えるとおかしい場合などは、合理的な検討が必要と考えます。例えば「煙の降下時間>避難時間」という数式で検証し、避難の安全性を担保するような手順を踏む必要があるのかもしれません。

これが、複雑になりすぎるのは申請業務が冗長になるので歓迎できませんが、少なくとも、確認申請の窓口で対応している担当者(設計者も検査する側も)が、法の趣旨を考えて避難安全の原理を理解したやり取りが必須だと思います。

何故こんな危険な建築が存在していたのか?という疑問の答えは、建築の確認審査の段階で、条文の裏技的な解釈で適合しているし、安全性の趣旨を理解しなかったことが原因と思います。

かなや設計 環境建築家 金谷直政